無論その間までも色々と問題はありました。
一番は原発のこと。
放射性物質の数値が落ち着くまでは西に疎開することを真剣に考えていました。ただ、産科の場合、これまでの経緯を把握できていない妊婦を受け入れる病院は、今の世の中ほとんどないので、あまり現実的でない、といった問題もありました。
そして予定日を過ぎ、まだ生まれない、兆しも見られない、という1週間が過ぎ、先述のへその緒と脳の血流量の問題から、かみさんは18日に入院します。実は15日まで仕事が立て込んでおり、18日の入院は自分にとって願ってもない幸運でした。
入院前夜、かみさんの大きなお腹をさすりながら、「このでかい腹も産まれるとしぼむんだよな」とか、「それにしても遅いのはやはりなにか問題があるのかな」とか、「こっちの都合で伸ばしすぎて、赤ちゃんに悪い影響があったらどうしようかな」等々、「あんたのんきすぎる」といわれる俺でもさすがにこんな風に考え、この晩はなかなか寝付けませんでした。
ただ、そのときもお腹の中の赤ちゃんは、自分なりに下に降りよう、降りようとしている動きが感じられ、心強く思うと同時に、きっと元気な赤ちゃんだな、と確信もしたのでした。
入院後は産道に海草を入れたりバルーンを入れて刺激しますが、なかなか規則的な陣痛には至りません。この日はほとんどすることもなく、昼に一旦帰り、仮眠して、ローラー台で30分自転車に乗り、夕方にまたかみさんのところに行くと、やはりまだ陣痛はないとのこと。この日はおとなしく帰ります。
翌日。陣痛促進剤を点滴に入れ、様子を見ます。
だんだん規則的にはりが出ます。しかし、4分間隔ではりが来ると同時に、赤ちゃんの心拍数が著しく下がるのです。通常140拍くらいの心拍が、お腹がはりとともに、50から35くらいになってしまうのです。そのときの赤ちゃんは苦しかったのだと思います。看護婦さんいわく「こんななんちゃって陣痛でこんなに心拍が下がるのは良くない兆候ですね」。なんちゃって陣痛って表現が笑えますが、要するに産まれてくるときの痛みはもっと大きいということなのでしょう。かみさんも苦笑いして同意せざるを得ませんでした。
この時点で院長先生が帝王切開を提案。私もかみさんもこれを受け入れ、後は大学病院に行っている副院長先生の帰院を待ち、手術を行なうことになりました。
17時43分。かみさんの両親と病室で待っていますが、そろそろでないかな、と病室の扉をあけると、何と産声が聞こえる!
その力強い元気な泣き声に、安堵するとともに、訳もなく涙が溢れます。
正直に言うと、五体満足でなかったとしても、それがその子の個性だ、と思って受け入れる心積もりはできていました。世の中には色んな障がいを持つ人がいます。障がいは個性だ、というのが私の基本的な考え方です。まあ、できるなら障がいはないほうがいいけど、あっても仕方がない、という風に考えを決めていました(もっとも、これから何があるかはまだまだ分からないのですが)。
横を見ると、かみさんのお母さんも泣いています。聞けば、3人生んできたお母さんですが、実は産声を聞いたことがなかったのだそうです(間違い=お父さんが聞いていない。考えてみれば当たり前ですが2011.4.29修正)。
そして赤ちゃんが産まれてこれてよかった、と思うと、神様でもないし、自然に対してでもないけど、やはりみえざる何かへの感謝の念が湧いてくるのでした。
ただ、この時点ではかみさんの体調が気がかりでしたが、しばらくして院長先生が出てきて、母体も問題ない、と教えてくださる。これでどちらの無事も確認できました。よかった。
17時39分、2665グラム。
助産師さんが抱かせてくれました。小さく、あまりに軽いのですが、さっきまでこの子がかみさんのお腹の中にいたんだ、と思うと新たな感激が生じます。産まれてこれてよかったね、と思うのでした。
そこからはおかあさんと写真撮りまくり。泣き声を上げても、私が話しかけると泣き止むのです。助産師さんいわく、「お腹にいたときに聞きなれた声だからでしょうね」なんていってくださる。そうか、うわー、かわいいやつよのう!!
早くもメロメロです(笑)。
自分の性格からして、娘を嫁になんかやらない、とか、彼氏を家に連れてくると不機嫌になる、とかそういう父親にはならない(そういう親子べったりな関係が気持ち悪くていや)と思っていますが、素直で、まっすぐな気持ちの子には育ってほしいとか、色んなことを思いました。
そして帝王切開で子宮の収縮の痛みに苦しんだかみさんをいたわり、3人で一緒に歩んで行きたいと思っています。
自転車練習は今日から再開しようと思っていましたが、今日はケーブルテレビでフレッシュ~ワーロンヌの自転車レースなので、明日からでもいいかな、と思っています。
長文ですみません。最後までお付き合いくださった方はありがとうございました。入院前夜の眠れなかった夜のことと、生まれたときの感動を忘れないよう、書きました。
会社も当初は育児休暇を取るつもりでしたが、この分だとゴールデンウィークにしっかり休めばかみさんケアもできるし、後は週末に有給休暇をくっ付けるとかで何とかなりそう。本当によい時期を読んで産まれてきてくれた。俺と違って空気の読める子だ!(笑)
明日からは自転車練習と、育児の日記になるかと思います(笑)。
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